ブレンド日本茶の正体。それはアートとサイエンスの交差点。
深い緑の葉に、高温に熱した自然水を注ぐ。
立ち上がる香りは、まるで雨の日の森の香り。だけどここは自然とはほど遠い、都会のマンションの一室。香りは時に私たちを遠い場所に連れていく。
単一茶葉がメジャーとされるお茶の中での、ブレンド日本茶との出会い。それは私にとって新しい景色との出会いでした。
そんな”合組日本茶”の神秘性について、日本茶インストラクターの多田雅典さんに伺いました。
ブレンド日本茶は、サイエンス。
合組という手法は昔からある、古典的なブレンド製法です。製法自体は真新しいものではありませんが、この”合組”が可能にするのは、日本茶のサイエンス(自然科学)です。
お茶が生み出す甘味、苦味、渋味、旨味、香りなど、それらは極めて構造的にロジカルに、いってしまえば小難しく説明できます。
茶葉の品種、栽培や製造等によって特徴がある程度分類できるからです。さらに淹れ方、お湯の温度、抽出時間などの変数をコントロールすることで、狙った味を狙い通りに生み出すことはそんなに難しいことではありません。
単一茶葉では実現できなかったような味、香りを実現できるのがこの”合組”の面白いところと言えるかもしれません。
コンセプトやストーリーを、日本茶の中につくる。
神秘性を感じるのは、そこに、作り手のコンセプトを感じるからかもしれません。
先程申し上げた通り、甘さ、旨さなどの味の追求だけであればロジカルに説明もできます。飲む人も甘い、苦いなどの判定もできるでしょう。
しかしながら、雨の日のような香りや、まるで深緑の森の中を歩いているような味わい、などは明確な答えもありませんし、人によって感じる感じないの差もあります。
きっとこういう風味、香りではないか。自然とは、深い緑とはこうではないか、と作り手は、想像し、それを再現するために様々な茶葉を合組(ブレンド)したり、抽出方法などを試行錯誤しながら一つのお茶を生み出していくわけです。その意味では、合組はイマジネーションを実現する、一つの手法と言えるでしょう。
そしてもちろん、飲む人がそれを感じるか、雨を感じるか、森を想像するか、委ねられる。お茶を味わうその人、その人ごとに、感じ方、解釈が異なるということは言えると思います。
サイエンスとアートのちょうどいい距離感のところに日本茶はいるのかもしれませんね。
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多田雅典(ただまさのり)さんプロフィール
大阪府出身。大学卒業後、マーケティング会社を経て、2016年に約160年の歴史を持つ大阪の老舗製茶問屋・多田製茶に入社。企業のオリジナル日本茶の開発や、調理師専門学校等での日本茶授業など、従来の日本茶の枠を超えた活動を展開中。日本茶インストラクター・リーダー、日本茶アドバイザー専任講師(日本茶鑑定)、大阪茶業青年団主催 第61回・第62回 審査技術競技大会 優勝。
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